カインド・オブ・ブルーの真実 [読書]
「カインド・オブ・ブルーの真実」
アシュリー・カーン(著)
フランス人作家が書いたある戯曲に次のようなセリフがある。
「神秘的なものが美しいのはそこに秘密が隠されているからであって、真実が隠されているからではない」
それでも人間は、真実を知らずにはいられない。
まるでタイタニック号のような数々の謎と数奇な運命を持った、ジャズ史上最高傑作とされる名盤「カインド・オブ・ブルー」。
40年という時を経て、その多くの謎を解き明かしたドキュメンタリーである。
伝説のアルバムを生み出した完全なるマスターテープを聴く機会を得た筆者は、マスターテープを前に自問自答した。
「はたして私は、マンハッタンのダウンタウンにたたずむかつての教会にマイルスが彼の名高いセクステットを集めた、その春の日の神秘を解くなにかを聴くことが、あるいは直観することができるだろうか?」
彼は見事に聴いた。そして見事に検証した。
掲載されている写真や内部資料もすごい。
涙ものなのが、マイルス・デイヴィスとビル・エヴァンスの2ショットの数々。
真実を知って初めて見えてくるものがある。聴こえてくるものがある。
一方で、真実から生まれる新たな神秘というものもある。
本を読み進めながら、「カインド・オブ・ブルー」をかけずにはいられなかった。
1959年。30丁目スタジオ。
自分もレコーディング・セッションに立ち会っているかのような錯覚に襲われた。
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