チェコ・フィルの「新世界」@サントリーホール [音楽]
マエストロ、ズデネク・マカル氏が率いるチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演(27日)@東京・サントリーホールへ行ってきました。
この日のプログラムはオール・ドヴォルザーク。
★チェコ組曲 op.39 よりポルカ
★チェロ協奏曲 ロ短調 B191 (チェロ:堤剛氏)
★交響曲第9番 ホ短調 B178 「新世界より」
チェコ・フィルでドヴォルザーク。
(チェコ・フィルが初のコンサートを行ったのは1896年。そのときの指揮者はドヴォルザークでした)。
しかもドヴォルザークが米国滞在中に作曲した「新世界」を、ソ連軍侵攻によって西側へ亡命、その後、米国に新天地を求め、30数年間の時を経てようやく母国のチェコ・フィルに首席指揮者として迎えられたズデネク・マカル氏が指揮をするのである。
それを生で聴けるだけで私には十分でした。
そういうことを意識しながら「新世界」を聴くとなると、日本人としてはつい情緒的といいますか、浪花節的なウェットな演奏を期待してしまいますが(笑)、マカル氏の指揮する「新世界」はそんな期待をいい意味で裏切って、ぐいぐい、きびきびと進んでいったような気がします。途中、「えっ、こんなにテンポが速かったっけ?」と感じたところがありましたが、まさにマカル氏ならではのニューワールド。聴けて本当によかった~。
そうそう、マカル氏は「新世界」を暗譜で指揮していました。
ところどころマカル氏の気合の入った雄叫びも聴こえてきて実に楽しかった。
さて、この日のプログラムの幕開けの「チェコ組曲」。
弦の音がとにかく柔らかで、シャンパンでほろ酔いしていた私には特に心地よい始まりでした。ところが演奏が始まって4、5分のところで、一瞬、指揮が止まったように感じて「あっ、オケが止まっちゃう!?」とヒヤリとする場面があり(←酔っていたからでしょうか……笑)、一気に目も酔いも覚めてその後は集中して聴くことができました。
2曲目のチェロ協奏曲のソロは、今年9月にサントリーホール新館長に就任した堤剛氏。
チェコ・フィルをバックに日本的でウェット(?)な演奏で、これはこれで面白かった。なんとなく髪型が似ている(失礼!)マカル氏と堤氏が並んでいる光景を眺めながら、2人の共演を生で見るのはこれが最後かなあ……と思ったりもして。堤氏のアンコールはカザルスの「鳥の歌」。
休憩を挟んで「新世界」。
そして、アンコールはドヴォルザークのスラブ舞曲15番でした。
↑マカル氏のいきなりな振り始めに、出遅れる団員多数(笑)。
この日の公演の全体的な印象としては、元気なマカル氏がオケをぐいぐい引っ張っていく感じがしました。ときどき、テンポについていけない感のメンバーもいたりして。
アンコールの曲も「ほらほら若い衆、ちゃんとついてこいよ!」的で、指揮を終えた瞬間は息切れしていておどけながら(?)ハアハアと肩で息をしていましたが、実に楽しそうな表情をしていました。フルマラソンを終えた瞬間にランナーが浮かべるような笑みが印象的でした。
「首席指揮者、辞めなくてもよかったんじゃない?」というのが私の感想です。
どうして辞めたのか本当に不思議でした。後任もいないのに……。
オケよりもめっちゃ元気ではないですか!
それにしても、今回の来日公演。
私はこの日に全日程を把握しましたが、指揮者にもオケにもスタッフにも体力的にかなりキツい日程だったのでは?と思いました。連日のように移動、演奏です。
①福井(11月20日)
↓
②盛岡(11月21日)
↓
③東京・すみだトリフォニーホール(11月22日)
↓
④京都(11月24日)
↓
⑤横浜(11月25日)
↓
⑥東京・サントリーホール(11月26日)
↓
⑦東京・サントリーホール(11月27日)
↓
⑧札幌(11月29日)
もし私がこの日程で観光したら確実に風邪をひきそうです(笑)。
移動の飛行機や電車、バスのなかはかなり乾燥していて、これがまた体力を奪う……。
ましてや彼らにとっては異国。さらに行く先々で最高の演奏を求められ、集中力も体力も維持しなくてはいけません。プロとはいえ、このスケジュールをこなした彼らに心から拍手です。
福井にまで行っていたとは。しかもその翌日が盛岡って……。
これは日本人の出張でもキツい(笑)。
特に日本海側のウェットな重い寒さは欧州のドライな寒さとは違うので、かなり身体にこたえるのではないかと思います。盛岡、京都、東京の寒さもそれぞれ違った冷え方ですし……。最終日の札幌公演を終えたあとは、少しのんびりしてほしいですよね。
過去の関連日記。↓
「チェコ・フィルで何が?」
プラハの風景↓
コメント 0